アトピー性皮膚炎のための保湿外用薬の使い方

アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚は外からの刺激に弱く、容易に皮膚炎を生じてしまいます。
アトピー性皮膚炎の治療には、食べ物や環境中の原因・悪化因子を取り除くこと、炎症を抑えるための薬物療法とともに、皮膚の機能異常を補正するためのスキンケアが必要です。
患者さんが行うべきスキンケアとしては、皮膚の清潔・保湿・およびその他の衣類に関する注意や室内環境整備などがありますが、ここでは特に保湿外用薬の使い方について説明します。


皮膚炎の激しい時


①まず炎症を抑える

皮膚が赤くただれたりブツブツとした膨らみがある時期には、保湿外用薬のみでは症状を改善させることはできません。まずは適切なランク(強さ)のステロイド外用薬を選択して炎症を抑えることが必要です。


②ステロイドは1日1回で十分、保湿外用薬を追加して1日に1回か2回塗る

皮膚炎を抑えるためには、ステロイド外用薬は1日1回塗るだけで十分効果が現れます。
しかしこの時期には落屑(らくせつ---皮膚表面のポロポロした脱落)が多く、皮膚の保湿機能も大きく損なわれているため、夜入浴後に塗り薬を塗っても、しばしば翌日には皮膚は乾燥し、がさがさになってしまいます。そういう場合には朝または昼間にも塗り薬を塗り足すことが必要です。そのために使う外用薬は保湿外用薬だけでも構いません。


③保湿外用薬は広い範囲に塗る

ステロイド外用薬は皮膚炎の明らかな範囲を中心に塗ります。しかしそれ以外の正常に見える皮膚でも、多くはドライスキンの状態にあります。そのためできるだけ広い範囲に保湿外用薬を塗っておきましょう。


④しわに沿って、まんべんなく

保湿外用薬は少し多めに取り、手のひらを使って皮膚表面にまんべんなく塗りのばします。
皮膚のしわは概ね体の軸に対して横方向に走っています。できるだけしわに沿って薬を塗りのばしてください。背中など自分で塗りにくいところは、誰かに手伝ってもらいましょう。


⑤ステロイド、タクロリムス、保湿剤をうまく組み合わせて使う

近年アトピー性皮膚炎の治療には「タクロリムス軟膏」というステロイドとは異なるしくみで皮膚の炎症を静める外用薬が用いられるようになってきました。明らかな炎症を抑えるための手段としては、ステロイド外用薬以外にタクロリムス軟膏が用いられることもありますが、保湿薬の使い方に変わりはありません。




皮膚炎が落ち着いている時


①保湿剤で良い皮膚の状態を維持

ステロイド外用薬またはタクロリムス軟膏の使用によって皮膚炎が落ち着いても、多くの場合は皮膚の乾燥した状態は続いています。皮膚炎がないからといってまったく外用薬を塗ることを止めてしまうと、どうしても皮膚は乾燥しがちとなり、様々な刺激に敏感に反応して容易に皮膚炎を再発してしまいます。
1日1回は必ず保湿外用薬を塗りましょう。1日のうちでは入浴後が最も適切です。


②皮膚炎が再燃したら迷わずステロイド

一時期皮膚炎が治まっていても、皮膚炎を起こしやすい体質そのものはなかなか変わりません。明らかな皮膚炎が再燃してきた時には、保湿外用薬らみに頼ることなく、迷わず適切なランクのステロイド外用薬またはタクロリムス軟膏を塗って、皮膚炎を抑えましょう。


③クリーム、軟膏、ローション剤などから自分にあったものを探す

夏に保湿剤を塗るとベタついて気持ち悪い感じがする場合があります。クリームやローションといった、比較的ベタつきにくい剤型の保湿外用薬もありますから、季節により、また個人の好みに合わせてそれらを試してみるのも良いでしょう。


④様々な保湿外用薬の長所と短所

保湿外用薬には様々な種類があります。主な保湿外用薬とその長所・短所を表に示します。具体的な選択は皮膚科の医師に相談しましょう。


保湿外用薬 長 所 短 所
油脂性軟膏
(白色ワセリン、プラスチベース、亜鉛華軟膏、親水軟膏)
・保湿外用薬の基本
・安価
・刺激感もほとんどない
・ベタつく使用感が好まれない場合がある
尿素クリーム、
ローション

(ウレパール、ケラチナミン、
パスタロンなど)
・保湿効果が高い
・ベタつきが少ない
・皮膚炎の部位に塗ると刺激がある場合がある
ヘパリン類似物質
(ヒルドイド、ヒルドイドソフト、
ヒルドイドローション)
・保湿効果が高い
・ベタつきが少ない
・塗りのばしやすい
・種類により少し臭いがある
セラミド
(キュレル、
AKマイルドクリーム)
・角質細胞間脂質で、皮膚本来の保湿機能を担っている物質 ・高価
・医師からの処方ができない
その他
(アズノール軟膏、ユベラ軟膏、ザーネ軟膏、オリーブ油)
・比較的ベタつきが少ない ・各薬剤により異なる